
いざ建物計画を進めるにあたって最初に行うことと言えば、地盤調査です。
地盤調査とは、建物を建てようとする場所の地面の中を調べる調査のことを言います。
地面の中がどのような状態か、計画建物を支えられるだけの支持層がどの深さにあるか、などを調査します。
建物を建てる際には建築基準法にて地盤調査の実施が義務付けられているほど重要な調査です。
建物が沈まないための設計をするのに必要な調査ですから当然です。
ここでは地盤調査にはどのようなものがあるのか、地盤改良工事や杭工事の設計にどのような影響があるのかをご紹介します。
地盤調査にも様々な種類がありますが、代表的な8つの調査をご紹介します。
目次
Toggle①ボーリング調査(標準貫入試験)

地盤調査の最も代表的な試験がボーリング調査です。住宅からビルまで規模に関係なく活用できる精度の高い調査です。
金属製の筒を決められた基準で地面に打ち込み、その打撃回数を「N値」という数値に読み替えて地盤の固さを調べます。
調査内容によって直径66mm、86mm、106mmの筒を使い分けます。深さ1m毎にN値を測定し、どこに支持層があるかを確認していきます。
同時に1m毎にその地質を引っ張り上げて種類も確認します。
よくある地層では粒の細かいものから粘土→シルト→砂→礫。そのほか岩盤、風化岩、玉石、火山灰、シラス、有機質土(腐植土)、埋土、廃棄物…といった様々な種類があります。
最後には採取した地質のサンプルをお渡しするので、地面の中はこうなっているだというのが目に見えてわかるので面白いです。


この調査で主に確認することは1m毎のN値、地質の種類と深さ、地下水位の位置です。
基礎構造設計を始めるために必要な重要な調査ですので、工場・倉庫を計画する際にはほぼ必ずと言っていいほど実施する試験です。

②SWS試験(スクリューウエイト貫入試験)

ボーリング調査よりもう少し簡易的な試験がSWS試験(スクリューウエイト貫入試験)です。旧称はスウェーデン式サウンディング試験といいました。
住宅などの小規模建物の調査に活用したり、ボーリング調査の補足試験として併用することで精度の高い地盤情報を得るために活用します。
山や海、河川に近い土地においては、支持層の深さが一定でないことがあります。
既成杭などは事前に設計した長さで製作するため、支持層の深さの情報は長さを決めるためには重要な情報となります。
建物の四隅でボーリング調査を行い、その四点を結んだ線上で一定間隔にSWS試験を行うことで、支持層の深さを明確にしていきます。
中大規模の建物ではこの試験単体の情報だけでは設計は難しいです。
先端がドリルのような形状になっている鉄の棒を地面に突き刺し、回転させながら圧力をかけて貫入させていきます。
地面に押し込む圧力の値や回転に対する抵抗値を測定し、そこから算出される値を「換算N値」として地盤の固さを調べていきます。
また、貫入時に聞こえる音や細かな振動の違いから地質の種類も想定することができます。
この調査で主に確認することは1m毎のN値、地質の種類と深さです。
③平板載荷試験

地表面に直径30cmの載荷板を設置し、そこに鉛直方向の圧力をかけ、沈下量を測定することで地盤の強度を判断する試験です。
地表面での試験となるので、深さ60cm程度までが調査できる範囲であり、深い部分の地盤強度は判定できません。
基礎設計を直接基礎とする場合の基礎下地盤の強度を確認する際などに活用します。
④液状化判定試験
地中の地盤が液状化する可能性があるかを調査するための試験です。
液状化とは、地震の際に地中から水が浮き上がってくることで、地面の歪みや陥没が起こることを言います。
液状化は水を含んだ砂質地盤で発生する可能性があります。
その仕組みは、普段は水と砂の粒がバランスよく分散されている地盤状況から、地震の揺れによって砂の粒は下に、水は上に分離することによって、
その上の地面が浮き上がった水の中に崩れ落ちてくることで発生します。
急にぽっかりと道路に穴が開く現象がニュースになったりしますが、液状化が原因であることが多いですね。

建物が建った後にその下の地盤が液状化してしまうと急激な建物の傾きが起こってしまいます。大きな事故が起こる可能性が高いです。
⑤圧密試験
地中の地盤が圧密沈下する可能性があるかを調査するための試験です。
特定の地盤にその上の地盤や建物の荷重が長期間かかることで、少しずつ地盤が沈んでいく現象を圧密沈下と言います。
圧密沈下は水を含んだ粘土質地盤で発生する可能性があります。
その仕組みは、長期間地盤に荷重がかかることで粒の間隔が少しずつ圧縮され、間に含まれる水が徐々に排出されることで沈下が発生します。
豆腐におもりを乗せて水抜きすると小さくなるイメージですね。
液状化のように突発的に起こるものではなく、気が付けば建物が沈んで斜めになっていたというケースが多いです。
⑥土質試験
主に、土の組成、密度、強度、透水性などを測定するための様々な試験をまとめて土質試験と言います。
調査した土質によって実施する試験も異なるので、その都度適切な試験を実施します。
細かな情報を調べることにより構造設計に用いる係数の安全率を抑え、過大な地盤改良案、杭案にならないようにすることができます。
⑦孔内水平載荷試験
ボーリング調査後の孔を使用して地盤の水平方向の強度を調べる試験です。
ボーリング孔に専用の機材を入れ、調査したい深さにて孔の側面を加圧、そのめり込み具合や抵抗値などから地盤の水平方向の強度を測定します。
風船のように膨らませるタイプのものや、ジャッキのような機構で側面を加圧するタイプなどがあります。
杭の設計においては地盤の水平方向の強度の値も考慮するため、正確な値を調べることで過大な杭の設計にならないようにすることができます。
⑧室内配合試験
特定の深さで採取した土と改良材を混ぜ合わせ、どの程度の配合の割合であれば求める強度が出るかを調べる試験です。
同じ改良材の量を混ぜ合わせても、土質の違いや含水率、密度、不純物の有無などによって発現する強度は変わってきます。
現地の地盤と改良材を混ぜ合わせる地盤改良を計画する際には必須の試験です。
地盤情報は適切な地盤改良、杭の設計するための重要なデータ収集です。
情報の数が設計精度に諸に直結します。データが多ければ多いほど、安全率を抑えた精度の高い設計ができ、
工法の選択肢も増えて工期やコストを抑えた方法を検討することが出来ます。
試験によっては1検体を調べるのに数千円~数万円かかるものもありますが、
後々の地盤改良や杭の費用をぐっと抑えられる可能性があるため、適切な試験はなるべく行うことをおすすめします。
地盤改良工事に関しては別のコラムも是非ご覧ください(建築の第一歩は地盤から!地盤改良工事と杭工事を学ぶ)
計画はまだこれからなので…という方のご相談にも乗れますので是非お声がけください。

入社12年目の34歳です。工場・倉庫の建設への不安を少しでも無くせる様にコラム記事の記載を始めました。
休日は、5歳の息子と遊ぶ(遊ばれる?)のが一番のリフレッシュです。
工場・倉庫の新築工事を長年専門としておりますので、お気軽にお問い合わせください。